2025年ステップ・アップ・ツアー

2025 中国新聞ちゅーピーレディースカップ「奇跡のノーボギー圧勝」

2025年JLPGAステップ・アップ・ツアー第15戦「中国新聞ちゅーピーレディースカップ」は、広島県廿日市市の芸南カントリークラブ(6,555ヤード/パー72)を舞台に、9月25日から27日までの3日間にわたって開催されました 。

この大会は、優勝賞金360万円、賞金総額2,000万円をかけて争われましたが、最終的に、一人の若きプロのキャリアを決定づける劇的な勝利となりました 。

優勝を飾ったのは、プロとして大きな壁に挑み続けてきた平塚新夢選手です。彼女はトータル13アンダーという圧倒的なスコアを叩き出し、2位タイに4打差をつける文句なしの「圧勝」で、待望のプロ初優勝を飾りました 。

この勝利が持つ意味は、単なる賞金獲得以上に極めて重大です。本大会はステップ・アップ・ツアーにおけるリランキングの基準となる重要なタイミングで行われました 。

この優勝により、平塚選手はシーズンの後半戦において安定した出場権を確保する基盤を築きました。さらに、優勝者特典として、レギュラーツアーの「大王製紙エリエールレディスオープン」への主催者推薦出場資格を獲得しました 。

このレギュラーツアーへの切符は、平塚選手がトップレベルの舞台で自身の技術を試す、キャリア上決定的なマイルストーンとなるでしょう。

平塚新夢というゴルファーの物語

才能と試練:アマチュア時代の成功とプロテストの長い道のり

平塚選手の才能は早くから開花していました。2017年5月には、まだアマチュアでありながらステップ・アップ・ツアーの「静ヒルズレディース森ビルカップ」で優勝するという偉業を達成しています。これは史上5人目となる快挙であり、将来を嘱望されていました 。

しかし、そこからの道のりは長く険しいものでした。プロテスト合格までには7年もの歳月を要し、その間には

2度の大きな病気に見舞われ、競技を続けることすら危ぶまれるほどの困難に直面したといいます 。彼女自身、「何度も諦めようと思った」と率直に語っており、この7年間の苦闘が、今回のプロ初優勝の感動的な背景を形成しています 。

広島が幸運の地となった理由

平塚選手がこの困難な道を歩み続けることができたのは、両親やサポーター、そして個人的な精神的支柱があったからです。その一つが、彼女がファンクラブにも入っているというアイドル、花村想太氏の存在です 。

興味深いことに、平塚選手にとって広島は、花村氏のイベント抽選に過去2回当選した縁起の良い、いわば「パワースポット」でした。

プロ合格の報告も直接アイドルに伝えることができたと語るなど、この個人的な喜びと、広島という場所に対するポジティブな感情が、大会の成功に深く結びついていました 。

実際、最終日のラウンドは、精神的な安定からスタートしました。滅多に入らないという、スタートホールの約15メートルからのチップインバーディーが決まった瞬間、彼女は「今日は良い日だ、楽しくプレーしよう」と前向きなマインドセットに切り替えることができたと述べています 。

この最高のスタートが、プレッシャーがかかる最終ラウンドで、彼女が持つ技術力を最大限に発揮させる精神的な基盤となりました。

勝利を決定づけた「ノーボギーR」と驚異のパット技術

<Photo:Masterpress/Getty Images>

最終日の鉄壁のパフォーマンス

平塚選手の勝利の決定的な要因となったのは、最終日のプレー内容です。首位でスタートする重圧の中で、彼女は5バーディーを奪い、スコア67を記録しましたが、そのラウンドはなんと「ノーボギー・ラウンド」でした 。

トーナメントリーダーとしてミスなくフィニッシュするこの安定感は、技術的な完成度だけでなく、7年間の苦闘を経て身につけた強い精神的な成熟度を物語っています。

特に重要な瞬間として挙げられるのが、中盤の集中力です。13番ホールで1メートルのバーディーパットを沈めたことは非常に意義深く、その後、彼女は4連続で繊細なパーパットを成功させ、後続の追い上げを許しませんでした 。

この連続パーセーブは、単なるスコアリングではなく、リードを守り切るための鉄壁の守備力を証明しました。

卓越したパッティングスタッツの分析

この勝利が、たまたまの好調に終わらず、技術に裏打ちされた結果であることは、パッティングのデータが雄弁に物語っています。平塚選手は、この3日間で自己ベストとなる合計75パットを記録したと語っています 。

これは1ラウンドあたり平均25パットという極めて優秀な数字です。さらに、優勝を決定づけた最終ラウンドでは、驚異の22パットをマークしました 。

ゴルフにおけるパット数は、アプローチやグリーン上での読み、そしてプレッシャー下での集中力の総合的な指標です。3日間75パット、最終日22パットという数字は、彼女のショートゲームがレギュラーツアーのトップクラスに匹敵するレベルで機能していたことを示しています。

この盤石なパッティング技術こそが、「ノーボギー」という鉄壁の守りを実現し、トータル13アンダーでの圧倒的勝利を支えた決定的な要因でした。

97期生ルーキー世代の熱戦と競争の未来

<Photo:Masterpress/Getty Images>

トップ3独占に見る新世代の台頭

2025年中国新聞ちゅーピーレディースカップは、平塚選手のプロ初優勝というドラマに加え、JLPGAに新たな時代の波が押し寄せていることを示しました。

今大会のトップ3を飾ったのは、平塚新夢選手を含め、2位タイの小俣柚葉選手、大久保柚季選手という、全員が97期生のルーキープロであったという点です 。

この事実は、プロテストを通過してきた新世代の選手たちが、ステップ・アップ・ツアーにおいて即戦力としてハイレベルな競争を展開していることを明確に示しています。

2位タイの二選手もトータル9アンダーという素晴らしいスコアを記録しており、平塚選手の圧倒的なスコアの裏側で、熾烈な世代間競争が繰り広げられていたことがわかります 。

ライバルからの評価とツアー全体の質の向上

優勝を逃したライバルたちのコメントからも、平塚選手のプレーの質の高さが伺えます。2位タイの大久保柚季選手は、平塚選手のゴルフを評して「穴がなく完璧なゴルフだった」と最大級の賛辞を送っています 。

また、4位タイ(-8)に入った中地萌選手は、プロ入り後初のトップ5入りを果たし、「少し成長できたかもしれない」と手応えを感じています 。

これらの結果は、リランキングという明確な目標を前に、若手選手たちがレギュラーツアーへの登竜門としてステップ・アップ・ツアーを真剣勝負の場としていることを裏付けています。

平塚選手の勝利は、この「ルーキー黄金世代」をリードする最初の大きな成功であり、今後のレギュラーツアーの競争激化を予感させるものです。

以下に、今大会の最終結果のトップ層をまとめます。

2025 中国新聞ちゅーピーレディースカップ 最終結果(トップ4)

順位 選手名 期生 トータルスコア 最終日スコア 平塚選手との差
1 平塚 新夢 97期 -13 67 (ノーボギー) 優勝
T2 小俣 柚葉 97期 -9 4打差
T2 大久保 柚季 97期 -9 4打差
T4 中山 三奈 -8 5打差

 

新たなキャリアへの道筋

平塚新夢選手の「2025 中国新聞ちゅーピーレディースカップ」でのプロ初優勝は、7年間の苦難、病気との闘い、そして個人的な「幸運の地」広島での精神的な解放が、卓越した技術力、特に驚異的なパッティングの安定性と完璧に融合した結果でした。

この勝利は、リランキングを確実にし、さらにレギュラーツアーへの招待券を獲得したことで、彼女のキャリアの新たな扉を開きました 。

平塚選手は、自身の今後の目標について「欲張らず、着実に努力を重ねていく」と語っています 。回り道を経験し、困難を知る彼女の言葉は、強い決意と謙虚さを感じさせます。

ステップ・アップ・ツアーで圧倒的な実力を見せつけ、ライバルからも「完璧なゴルフ」と評された今、平塚選手の次の夢は、優勝特典で得たレギュラーツアーの舞台で、その確かな技術を証明することに移ります。

彼女の物語は、努力と信念が結実する感動的な証明であり、今後の日本女子ゴルフ界のメインステージで、彼女がどのような活躍を見せてくれるのか、大いに期待が高まっています。