JLPGAプロテスト

2025年JLPGA最終プロテスト、天国と地獄を分けた3日目

静岡県の裾野カンツリー倶楽部を舞台に開催されている2025年度JLPGA最終プロテスト。ここで鳴り響くのは、メジャートーナメントの最終日のような熱狂的な歓声ではない。張り詰めた空気の中、人生のすべてを賭けた一打一打が、重い反響音となって静寂に吸い込まれていく。

これは、優勝トロフィーを争うトーナメントではない。JLPGA会員という「資格」を、たった20の枠(20位タイまで)を巡って奪い合う、生存を賭けたサバイバルテストだ。

夢への片道切符。「ムービングデー」の残酷な現実。

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3日目は「ムービングデー」と呼ばれる。トップを走る者は安全圏へと逃げ切り、下位の者は崖っぷちから這い上がるための最後のチャンス。だが、JLPGAの最終プロテストにおけるムービングデーは、より残酷な現実を突きつける。

一般的なトーナメントと異なり、この最終テストには54ホール(3日目)でのカットラインが存在しない。

つまり、この日の時点で通算スコアが+5、+6、あるいはそれ以上となり、合格が絶望的になった選手たちも、最終日(4日目)のラウンドを回らなければならない。希望を失った状態で、夢が叶う瞬間のすぐ隣で、最後の18ホールを歩き続ける。

この「絶望」が目に見える形で存在するからこそ、合格ライン周辺の「希望」を巡る戦いは、常軌を逸した緊張感を帯びる。3日目は、天国への切符を掴みかける者と、地獄の淵を覗き込む者を、無慈悲に振り分ける一日となった。

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頂上決戦。二人の「アイ」が火花を散らす、首位攻防。

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合格ラインの遥か上空では、別次元の戦いが繰り広げられた。このテストで「トップ合格」という最高の栄誉を掴むための、熾烈な首位攻防戦だ。

その主役は、二人の「アイ」だった。

首位に立つのは、中国のジ・ユアイ。3日目を68(-4)という見事なスコアでまとめ、通算-11(トータル205)とした。その背中を1打差で追うのが、日本の伊藤愛華だ。

伊藤はこの日、リーダーグループで最高の「67」(-5)を叩き出し、通算-10(トータル206)まで猛然とスコアを伸ばした。

伊藤が「67」でプレッシャーをかけても、ジ・ユアイは「68」で応戦し、首位の座を譲らない。この二人だけが、通算スコアを二桁アンダーに乗せ、後続を大きく引き離す。

彼女たちにとって、もはや合格は当確。これは、プロとしてのキャリアを「1位」でスタートするための、誇りを賭けたマッチプレーと化した。

そして、このハイレベルな戦いに割って入ったのが藤本愛菜だ。藤本はこのムービングデーを「70」(-2)でまとめ、通算-7(トータル209)の単独3位をキープ。最終プロテストという極限のプレッシャーの中で、トッププロ候補生たちを相手に一歩も引かないどころか、トップ2に食らいつく。

その安定したプレーは、彼女が「合格」するだけでなく、ツアーの「主役」になる可能性を秘めていることを証明した。

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「今日しかない」— 崖っぷちからの猛チャージ。

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「ムービングデー」の称号にふさわしく、この日、自らの運命を劇的に変えた選手たちがいる。合格圏外という崖っぷちから、未来を掴むために牙を剥いたチャージャーたちだ。

その筆頭は、鳥居さくらだろう。彼女のスコアカードは、このテストの厳しさと、人間の精神力の強さの両方を物語っている。

  • R1: 76 (+4)
  • R2: 66 (-6)
  • R3: 68 (-4)

初日の「76」は、ほぼ「不合格」を意味するスコアだ。しかし、鳥居はここから蘇った。2日目に「66」という驚異的なスコアで生き返ると、勝負の3日目も「68」とチャージを続けた。

通算-6(トータル210)の4位タイ。絶望の淵から、たった2日間でトップ5まで「テレポート」してみせた。このV字回復は、今回のプロテストで最大のドラマと言っていい。

このほか、倉林紅がこの日「68」(-4)で4位タイに浮上し、台湾のワン・リーニンも「69」(-3)で同じく4位タイへ。大村みなみも「69」をマークし、9位タイ(-3)にジャンプアップした。

また、第1次予選から注目されてきた横山翔亜も、ムービングデーを「71」(-1)と堅実にまとめ、通算-5の7位タイに位置。派手なチャージではないが、予選から続く長い戦いを勝ち抜くための「プロセスの確かさ」を感じさせる。

彼らチャージャーたちは、守りに入ることなく攻め抜いたことで、最終日に「合格」の二文字を強く意識せずにプレーできる「安全圏」のポジションを自力で掴み取った。

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ここからが、本番だ。地獄の「合格ライン」攻防戦。

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リーダーたちの華麗な戦いや、チャージャーたちの劇的なカムバック。だが、JLPGA最終プロテストの「本番」は、ここにある。

合格ラインである「20位タイ」を巡る、息もできないほどのポジション争いだ。

3日目を終えて、その境界線は通算-2から+1のわずか3ストロークの間に、19人もの選手がひしめく大混戦となっている。

T15(15位タイ)の-2が3人。

T22(22位タイ)の-1が5人。

T27(27位タイ)のE(0)が3人。

T30(30位タイ)の+1が8人。

彼女たちは、わずか5〜8枠程度しかない残りの「合格切符」を巡り、最終日にすべてを賭けることになる。

運命の境界線:合格ライン周辺の攻防

順位 (Rank) 選手名 (Player) 通算スコア (Total) 3日目スコア (Day 3) 最終日へのステータス (Status)
T15 肥後 莉音 -2 70 (-2) 暫定圏内 (Inside the Line)
T15 所 彩仁香 -2 72 (E) 暫定圏内 (Inside the Line)
T15 横山 珠々奈 -2 73 (+1) 暫定圏内 (Fading?)
— (合格ライン 20位タイ) — — (THE BORDERLINE) —
T22 中澤 瑠来 -1 71 (-1) 圏外 (Outside)
T22 橋添 香 -1 71 (-1) 圏外 (Outside)
T22 林 希莉奈 -1 71 (-1) 圏外 (Outside)
T22 (他2名) -1 圏外 (Outside)
T27 (3名) 0 1打差 (1 Shot Back)
T30 清水 友莉耶 +1 68 (-4) 猛チャージ (Charging)
T30 中嶋 月葉 +1 73 (+1) 後退 (Fading)
T30 (他6名) +1 2打差 (2 Shots Back)

 

魂の68。希望を繋いだ清水友莉耶

この地獄絵図の中で、最も「ワクワク」する希望の光を放ったのが、30位タイの清水友莉耶だ。

彼女はこの日、通算+5という絶望的な位置からスタートした。だが、ムービングデーの重圧を力に変え、なんと「68」(-4)をマーク。このスコアは、首位のジ・ユアイや、大逆転劇を演じた鳥居さくらと並ぶ、この日のベストスコアタイだ。

リーダーにとっての「68」はトップ通過への布石だが、清水にとっての「68」は、死の淵から生還するための「命綱」だった。通算+1の30位タイまで浮上。まだ圏外ではあるが、最終日に「奇跡」を信じられるポジションまで、自らの手で這い上がってきた。彼女は、最終日のダークホースだ。

悪夢のポジション。「圏外1打差」のT22

対照的に、最も心理的に苦しいのが、通算-1で22位タイにつける中澤瑠来、橋添香ら5人の選手たちだ。

彼女たちは、現在の合格ライン(T15の-2)に、たった1打届いていない。「あと1打」。この1打が、天国と地獄を分ける。

最終日は、アグレッシブに攻めてボギーを打つことも、ディフェンシブに守ってチャンスを逃すことも許されない。まさに「ナイフの刃の上を歩く」ような、極限の精神状態でのプレーを強いられる。

忍び寄る影。後退する「圏内」選手

合格ライン上の戦いは、 momentum(勢い)の奪い合いでもある。同じ「圏内」T15(-2)にいても、この日「70」で回った肥後莉音と、「73」(+1)を叩いた横山珠々奈では、最終日に臨む精神状態が全く違う。

同様に、T30(+1)グループでは、清水が「68」で駆け上がってきたのに対し、初日「69」と好発進した中嶋月葉は「75」「73」とスコアを落とし続けている。

最も重要なムービングデーに、スコアを落とす「負の勢い」。この流れを、最後の18ホールで断ち切ることができるか。

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最終日へ。彼女たちの「明日」を賭けた、最後の18ホール。

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ムービングデーは、残酷なまでに選手たちを選別した。安藤百香(+5)や長澤愛羅(+6)のように、合格ラインから6打も7打も離され、夢が「来年」へと持ち越された選手たちがいる。

彼女たちの静かな絶望を背景に、最終日は3つの戦いが同時進行する。

  1. 「トップ通過」の栄冠を賭けた戦い:ジ・ユアイと伊藤愛華。二人の一騎打ち。
  2. 「歴史」と「物語」を賭けた戦い:アマチュア藤本愛菜の快挙はなるか。鳥居さくらの大逆転劇は完結するか。
  3. 「人生」と「明日」を賭けた戦争:T15からT30の19人。清水友莉耶のチャージか、中澤瑠来のタイトロープか、横山珠々奈のサバイバルか。

これこそが、JLPGA最終プロテストの真髄だ。最後の18ホールは、もはやゴルフのラウンドではない。彼女たちの「明日」すべてを賭けた、最後の戦場である。

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