2025年度の戦いの火蓋は、全国各地の予選会場で切られた。中でもF組は、7月16日から18日にかけて福岡県の西日本カントリークラブを舞台に開催された 。
ここから、11月に岡山県のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部で行われる最終プロテストまで、約4ヶ月にわたるサバイバルレースが始まるのである 。
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Contents
西日本の試練の舞台と夢と絶望が交差する場所

西日本カントリークラブでの3日間の激闘の末、2次予選への進出ラインは通算5オーバーに設定された。
この厳しい基準をクリアし、次のステージへの切符を手にしたのは、35位タイまでの合計43名の選手たちであった 。
リーダーボードを見れば、トップ通過を果たした選手の驚異的なスコアから、カットラインぎりぎりで滑り込んだ選手まで、そのスコアは幅広く分布している 。
これは、夢を繋ぐか、来年まで待つかを分ける差が、いかに紙一重であるかを物語っている。
2025年度JLPGAプロテスト第1次予選F組 最終結果(合格者一覧)
順位 | SCORE | PLAYER | R1 | R2 | R3 | TOTAL |
1 | -10 | 新垣 くらら | 67 | 70 | 69 | 206 |
2 | -5 | 荒木 七海 | 70 | 69 | 72 | 211 |
T3 | -2 | 宮内 美空 | 72 | 69 | 73 | 214 |
T3 | -2 | 藤原 奈々 | 73 | 69 | 72 | 214 |
T5 | -1 | 叶 結衣 | 70 | 72 | 73 | 215 |
T5 | -1 | 宮城 柚 | 71 | 72 | 72 | 215 |
T5 | -1 | 三井 優奈 | 72 | 73 | 70 | 215 |
T5 | -1 | 秋田 光梨 | 72 | 72 | 71 | 215 |
T5 | -1 | 川口 心路 | 73 | 71 | 71 | 215 |
T10 | 0 | 宮城 杏 | 70 | 73 | 73 | 216 |
T10 | 0 | 畠田 瑠 | 72 | 73 | 71 | 216 |
T10 | 0 | 吉﨑 マーナ | 70 | 73 | 73 | 216 |
T10 | 0 | @平畑 佳子 | 73 | 72 | 71 | 216 |
T14 | +1 | 境原 茉紀 | 73 | 72 | 72 | 217 |
T14 | +1 | 小出 芽依 | 73 | 73 | 71 | 217 |
T14 | +1 | 松永 王花 | 73 | 72 | 72 | 217 |
T14 | +1 | 山下 真生 | 74 | 72 | 71 | 217 |
T14 | +1 | ファン・エリカ | 73 | 73 | 71 | 217 |
T14 | +1 | 川端 悠衣 | 72 | 74 | 71 | 217 |
T20 | +2 | 木下 夏帆 | 74 | 71 | 73 | 218 |
T20 | +2 | 樋口 瑚子 | 73 | 73 | 72 | 218 |
T20 | +2 | 竹原 美悠 | 73 | 73 | 72 | 218 |
T20 | +2 | 加藤 沙弥 | 72 | 73 | 73 | 218 |
T20 | +2 | 白 松 | 72 | 75 | 71 | 218 |
T20 | +2 | 杉原 彩花 | 74 | 71 | 73 | 218 |
T26 | +3 | チャン・イーハン | 74 | 72 | 73 | 219 |
T26 | +3 | @仲村 梓 | 74 | 74 | 71 | 219 |
T28 | +4 | 田上 桜 | 72 | 74 | 74 | 220 |
T28 | +4 | 池羽 陽向 | 75 | 72 | 73 | 220 |
T28 | +4 | 山本 彩乃 | 71 | 74 | 75 | 220 |
T28 | +4 | 東家 春奈 | 73 | 74 | 73 | 220 |
T28 | +4 | 柳 藍佳 | 74 | 73 | 73 | 220 |
T28 | +4 | 杉山 もも | 74 | 74 | 72 | 220 |
T28 | +4 | 村田 可朋 | 73 | 75 | 72 | 220 |
T35 | +5 | 本田 夢麗 | 73 | 75 | 73 | 221 |
T35 | +5 | 河上 宮甫子 | 75 | 73 | 73 | 221 |
T35 | +5 | 植田 梨奈 | 73 | 74 | 74 | 221 |
T35 | +5 | 小湊 鈴蘭 | 74 | 74 | 73 | 221 |
T35 | +5 | 福岡 靖菜 | 75 | 73 | 73 | 221 |
T35 | +5 | 玉城 豪華 | 76 | 73 | 72 | 221 |
T35 | +5 | 岡本 陽菜 | 74 | 75 | 72 | 221 |
T35 | +5 | バン・ヒヨン | 74 | 75 | 72 | 221 |
T35 | +5 | 冨金原 明莉 | 75 | 74 | 72 | 221 |
F組の先駆者たちの肖像

プレッシャーが極限に達するプロテストの舞台で、他の選手たちを圧倒し、卓越した技術と冷静さを見せつけた選手たちがいる。彼女たちのパフォーマンスは、次のステージを勝ち抜くために何が必要かを示唆している。
新垣くららの圧巻の勝利
F組の戦いを支配したのは、新垣くららだった。彼女は3日間を通して安定したプレーを見せ、通算10アンダーという驚異的なスコアでフィニッシュ。
2位に5打差をつける圧勝劇を演じた 。予選会という緊迫した状況でこれほどの大差をつけることは、並外れた技術力と精神的な強さの証明に他ならない。
他のトップアマチュアと比較して、彼女の日本ゴルフ協会(JGA)における過去の戦績データは限られており 、このパフォーマンスは、まさに最高のタイミングで才能を開花させた、あるいはナショナルレベルの舞台裏で着実に力をつけてきた選手の登場を告げるものと言える。
精鋭たちの追撃
新垣の後ろには、確かな実力を持つエリート選手たちが続いた。
- 荒木七海(2位、-5): 熊本県出身の有望なアマチュアである荒木は、その実力を遺憾なく発揮した。日本女子アマチュア選手権への複数回出場や、2021年九州女子選手権での4位入賞など、ジュニア時代から輝かしい実績を残しており、予選通過の有力候補と目されていた 。その期待に応える2位という結果は、彼女の確かな実力を裏付けている。
- 宮内美空(3位タイ、-2): 山口県出身の宮内もまた、アマチュア時代からその名を知られてきた選手だ。山口県ジュニアや中国高等学校新人戦での優勝経験があり、大舞台での強さには定評がある 。3位タイという成績は、彼女が一貫して高いレベルでプレーできることを示している。
- 藤原奈々(3位タイ、-2): 兵庫県出身の18歳、藤原は、250ヤードを誇るドライバーショットを武器に関西地区のアマチュア大会で実績を積んできた 。彼女の3位タイという結果は、そのパワーが全国レベルでも通用することを証明した。
F組のリーダーボード上位陣は、興味深い対比を示している。荒木七海や宮内美空のように、ジュニア時代から輝かしい実績を積み重ね、その実力通りの結果を残した選手がいる一方で、トップ通過を果たした新垣くららは、これまでの公的な記録をはるかに超える圧倒的なパフォーマンスを見せた。
この事実は、プロテストという独特のプレッシャー下では、ジュニア時代の実績以上に、直近のコンディションと精神的な準備がいかに重要であるかを物語っている。
荒木や宮内のような選手の成功は、日本のゴルフ界における人材育成パイプラインが正しく機能していることを示している。
しかし、新垣の5打差での圧勝は、予測を覆す「イベント」であった。
これは、過去の実績がプロテストの成功を保証するものではないという警告であると同時に、新垣のような選手が、最も重要な瞬間に自身のゲームを劇的に向上させる高いポテンシャルを秘めていることを示唆している。
それゆえに、彼女は2次予選で最も注目すべき選手の一人となるだろう。
未来のスターと育つ哲学

トップ通過者だけでなく、F組の合格者の中には、選手の成長、指導哲学、そして戦略的知性に関する興味深い物語が数多く存在する。
ジャンボ尾崎の弟子、池羽陽向のパワーへの道
伝説的ゴルファー、尾崎将司が主宰する名門「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」の門下生である池羽陽向は、その指導哲学を体現する選手の一人である 。
「体、技、心」の順で土台となる体作りを最優先し、絶え間ない練習(「素振りが足らない」)を通じて圧倒的なパワーを身につけ、そして選手自身の自立を促す(「一方的に教えていく、ではダメ」)というジャンボイズムは、数々のトッププロを育て上げてきた 。
この哲学の成果は、池羽の成長に明確に表れている。彼女はアカデミーでの指導により、ドライバーの飛距離が200ヤードから230ヤードへと30ヤードも伸び、「とにかく振れ!」という教えを実践できるようになったと語る 。
彼女の順位は上位ではなかったものの、この厳しく、パワーを重視するトレーニングがプロテストという試練を乗り越える力となったことは間違いない。
ジュニアチャンピオンの吉﨑マーナの戦略的ビジョン
2025年日本ジュニアゴルフ選手権を制するなど、輝かしいジュニアキャリアを誇る吉﨑マーナは、池羽とは対照的なアプローチでプロへの道を切り拓こうとしている 。
彼女は、海外の選手とのパワーの差を痛感した後、同郷の偉大な先輩である宮里藍が実践した「ビジョン54」(18ホール全てでバーディーを獲ればスコア54が可能という思考法)を取り入れた 。
これにより、彼女のゴルフはパワー追求から、戦略的な精度を重視する方向へとシフトした。
彼女のゲームは、自身の強みに基づいて構築されている。1ヤード単位で打ち分けることができるという卓越したユーティリティクラブのコントロールと、世界レベルのパッティング技術がその核である 。
10位タイという成績は、この知的で戦略的なアプローチの有効性を証明するものだ。
池羽陽向と吉﨑マーナの予選通過は、日本の女子ゴルフ界に存在する二つの対照的な育成哲学が、プロテストという舞台で交錯していることを示している。
一方は、尾崎将司が提唱する「圧倒的なパワー」を追求する道。もう一方は、宮里藍が体現した「戦略的な精度とメンタル」で勝負する道である。
ジャンボアカデミーで飛距離を30ヤード伸ばした池羽と、パワーの差を認識した上でショートゲームと戦略を磨くことを選んだ吉﨑。
彼女たちのプロテストでの歩みは、どちらのアプローチが、より過酷になるプレッシャーの下で有効なのかを示す、興味深いケーススタディとなるだろう。
1次予選は始まりに過ぎない。より長く、より難易度の高いコースが待ち受ける2次、そして最終プロテストで、池羽のパワーがアドバンテージとなるのか、それとも吉﨑の精度とパットがその差を無力化するのか。
これは単なる二人の選手の戦いではなく、日本のゴルフ界の頂点へと続く、二つの異なる道の優劣を占う戦いでもある。
山本彩乃に関する包括的レポート
今回のプロテストで最も注目すべき物語の一つが、山本彩乃の挑戦である。彼女のキャリアは、あと一歩で夢を逃してきた悔しさと、それでも決して諦めない不屈の精神によって定義されてきた。
西日本CCでのプレッシャー下のプレー
山本は、通算4オーバー(71-74-75)の28位タイで1次予選を通過した 。決して派手なスコアではないが、唯一の目標である「通過」を達成するための、プロフェッショナルで効果的なパフォーマンスだった。
この結果は、過去の失敗から学び、圧倒することではなく、生き残ることに徹した、彼女の精神的な成熟の証と見ることができる。
経験という名の試練と心痛の歴史
彼女のプロテストへの挑戦は2020年から始まったが、その道のりは苦難の連続だった 。特に、あまりにも僅かな差で涙を呑んだ経験は、彼女の心に深く刻まれている。2021年には最終プロテストまで進出したものの、33位タイに終わり、合格ラインに数打届かなかった 。
そして2023年、その痛みはさらに増す。最終的に22位タイとなり、わずか1打差でプロへの扉を閉ざされたのである 。
この繰り返される僅差での失敗が、彼女の今回の挑戦を、単なる再挑戦ではなく、数年間にわたる忍耐の集大成として位置づけている。
テストの外では証明済みの勝者
JLPGAの公式予選会では苦戦を強いられてきた山本だが、プロレベルの環境で勝利できることはすでに証明済みだ。
2021年に出演したテレビ番組「ゴルフサバイバル」での優勝は、彼女に全国的な知名度をもたらし、脱落方式という独特のプレッシャー下での冷静さを証明した 。さらに、プロを目指す有望株が集う「マイナビネクストヒロインゴルフツアー」のファイナルでも優勝を飾っている 。
JFE瀬戸内海への道
F組の分析を総括し、次のステージへと目を向ける。西日本カントリークラブを突破した選手たちのうち、誰がさらに厳しくなる試練を乗り越え、 coveted(誰もが欲しがる)JLPGAの会員証を手にすることができるのだろうか。
厳しさを増す試練:2次予選と最終プロテスト
F組を通過した43名は、9月に開催される3つの2次予選会場のいずれかに進むことになる。例えば、兵庫県の有馬カンツリー倶楽部などがその舞台となる 。
競技フォーマットは54ホールから、より過酷な72ホールへと変わり、体力と精神的な持久力がさらに高いレベルで要求される 。
そして、最終的な試練の場は、11月にJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部で開催される最終プロテストである。ここで上位20位タイまでに入った者だけが、晴れてプロフェッショナルとしての地位を手にすることができる 。
2025年JLPGAプロテスト第2次予選の詳細
- A地区
2025年 9月 2日(火) ~ 9月 5日(金)
静ヒルズカントリークラブ (茨城県) - B地区
2025年 9月 9日(火) ~ 9月 12日(金)
ゴルフ倶楽部成田ハイツリー (千葉県) - C地区
2025年 9月 9日(火) ~ 9月 12日(金)
有馬カンツリー倶楽部 (兵庫県)
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