2025年JLPGAプロテスト合格者

2025年の新星、鳥居さくらとスランプを乗り越えた「日本女子アマ」覇者

2025年11月7日、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の2025年度最終プロテストが終了し、新たなプロフェッショナルが誕生した。そのリストには、アマチュアゴルフ界で最も輝かしい実績を持つ一人の名が刻まれていた。鳥居さくら、その人である。

彼女の合格は、単なる「狭き門」の突破以上の意味を持つ。鳥居は、2024年「日本女子アマチュアゴルフ選手権」の覇者である。

2025年JLPGA最終プロテストの試練と突破の4日間

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鳥居のプロテスト合格は、決して平坦な道のりではなかった。彼女にとって、これは2度目の挑戦であった。前年のリベンジを期して臨んだ2025年、その舞台は岡山県のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部。11月4日から7日にかけての4日間、22名の合格枠を巡る熾烈な戦いが繰り広げられた。

最終的に、鳥居は通算4アンダー、284ストロークの7位タイ(T7)で見事合格を果たした。しかし、そのスコアの内訳こそが、彼女の真価を物語っている。

鳥居さくら 2025年JLPGA最終プロテスト 全ラウンドスコア

ラウンド スコア
第1日 76
第2日 66
第3日 68
第4日 74
合計 284 (-4)
順位 7位タイ

初日の「76」というスコアは、2度目の挑戦者にとって、精神的に極めて重いビハインドとなり得る。多くがこの時点でプレッシャーに沈む中、鳥居は翌日の第2ラウンドで「66」という驚異的なスコアを叩き出し、10ストロークもの挽回を見せた。

この劇的なV字回復は、単なる技術的な修正能力を超えた、彼女の強靭な精神力を示している。この「76」からの「66」というリバウンドは、後述する彼女のキャリア全体を象徴する「スランプからの復活」という物語の縮図であり、彼女のメンタリティが既にプロフェッショナルの基準に達していることを証明するデータとなった。

合格後、鳥居は「2回目の挑戦で、『今年こそは!』と思っていたのでなんとか通過することができて嬉しいです」と、率直な喜びを語っている。

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ダークホースから日本一へ

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JLPGAの新会員となった鳥居さくらは、どのようなバックグラウンドを持つ選手なのだろうか。

基本プロフィール

 

  • 氏名: 鳥居 さくら (とりい さくら)
  • 生年月日: 2007年1月23日
  • 年齢: 18歳 (プロテスト合格時)
  • 出身地: 兵庫県
  • 身長: 163cm
  • 体重: 62kg
  • 血液型: A型
  • ゴルフ歴: 5歳から (両親の影響で7歳から、という情報もある)
  • 出身校: 兵庫・滝川第二高等学校
  • 在籍校: 日本ウェルネススポーツ大学

アマチュア時代の主な戦績

  • 2021年:関西中学校ゴルフ選手権 優勝
  • 2023年:関西女子アマ 2位、日本ジュニア 3位
  • 2024年:日本女子アマチュアゴルフ選手権 優勝

特筆すべきは、彼女の経歴である。出身の滝川第二高等学校は、数々の名ゴルファーを輩出してきた関西の超名門校だ。そして、鳥居自身が目標とするプロゴルファーとして名を挙げているのが、古江彩佳プロと桑木志帆プロである。

特に古江彩佳は、同じ滝川第二高校の大先輩にあたる。鳥居は、自らの母校が生んだ稀代のスタンダード・ベアラーの背中を追い、エリートの系譜を意識的に歩んでいる。

2024年の日本女子アマ制覇は、彼女が「ダークホース」的な存在から一気にトップアマへと駆け上がった瞬間だった。その勝利は「本人も予想外の大金星」と報じられ、4日間すべて60台という圧巻のプレーで2位に5打差をつける快勝であった。

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最大のスランプと星野英正コーチとの出会い (本レポートの中核)

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2024年の日本女子アマ制覇と2025年のプロテスト合格。この輝かしい実績の陰には、彼女のキャリアを根底から揺るがした「最大のスランプ」と、そこからの奇跡的な復活を支えた一人のコーチの存在がある。

ドライバーが振れない恐怖

2024年以前、鳥居は深刻なドライバーショットのスランプに陥っていた。その症状は深刻で、「あまりにも曲がるため」「怖くて振れなくなっていた」という。

ドライバーを持ってもハーフスウィングで打つのがやっとで、しかも「左右どっちにも曲がる」という、技術的にも精神的にも最も重い症状に見舞われていた。このスランプこそが、彼女が最初のプロテスト挑戦で涙をのんだ要因の一つとも考えられる。

コーチ:星野英正プロとの出会い

この絶望的な状況を打開したのが、2024年から師事することになった星野英正プロであった。

星野コーチは、鳥居本人にも「わからなかった曲がる原因を見抜いた」。そのアプローチは、単なるスイング指導に留まらない、多角的かつ本質的なものであった。

1. 技術的介入(ドライバー):

星野コーチは、鳥居が球の吹き上がりを抑えるために「ロフトを1度立てて」ドライバーを使用していたことこそが、不調の原因であると即座に見抜いた。

フェース面が見えにくくなることでアドレスが不自然になっていた悪循環を断ち切り、ロフトを9.5度に戻させ、アドレスの入り方を修正させた。その結果、鳥居のドライバーは劇的に改善し、「違和感がなくなり真っすぐ飛ぶようになった」という。

2. 装備への介入(パター):

星野コーチの慧眼は、パターにも及んだ。ロングパットに悩む鳥居を見てパターをチェックしたところ、「向きが少しゆがんでいる」ことを発見。すぐに新しいパターを手配させ、交換させたことで、パッティングの不安も解消させた。

3. 精神的支柱:

日本アマを3度制覇している星野コーチは、技術的な指導者であると同時に、最高のメンターでもあった。2024年の日本女子アマ3日目を終え、プレッシャーを感じていた鳥居が星野コーチと話したところ、「落ち着いて最終日は吹っ切れた」という。

この星野コーチとの出会いこそが、鳥居のキャリアにおける最大のターニングポイントである。「ドライバーが曲がらなくなって自分を信じられました」という彼女の言葉が、そのすべてを物語っている。

スランプが生んだ「副産物」

このスランプは、鳥居にとって「悪いことばかりではなかった」と本人が述懐している点が非常に興味深い。

ドライバーが曲がり続けた結果、「ティーショットが毎回ラフや林に行って」いたため、彼女は必然的に「林からアイアンで球を曲げて打つ練習をたくさんした」。

「木の左からスライスをかけようと思ってその通り打てると嬉しい」。この逆境の中で、彼女は球を自在に操るアイアンの技術と、その「楽しさ」を見出した。

この経験こそが、彼女のプロフィールにおける「得意クラブ:アイアン」、そしてJLPGAへの自己PRで「ドライバーの飛距離と、アイアンがセールスポイントです!!」と断言する、絶対的な自信の源泉となっている。

彼女の最大の武器であるアイアンは、皮肉にも最大の弱点であったドライバーのスランプによって鍛え上げられたのである。

「イノシシ」と「オフスイッチ」

鳥居は自身のプレースタイルを「イノシシ年だから猪突猛進」「攻めた結果のミスなら許せるタイプ」と分析している。このアグレッシブな姿勢が彼女の持ち味だが、プロとして戦う上で、それだけでは危うさも伴う。

しかし、彼女はそのバランスを見事に体得している。「ゴルフ場を出たらゴルフの話は一切しないようにしています」。その日のミスのことを考え続けると「脳が疲れて」、翌日のプレーに影響が出るため、「スイッチをオフにする時間が必要なんです」と、10代とは思えぬ自己管理能力を語る 。

「猪突猛進」の攻めの姿勢と、冷静な「オフスイッチ」によるメンタルコントロール。この両立こそが、彼女のプロフェッショナルとしての成熟を示している。

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スポンサー契約とサポート体制

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プロゴルファーにとって、コース外でのサポート体制はキャリアを左右する重要な要素である。鳥居は、その点において既に万全の基盤を築いている。

スポンサー契約

  • 所属スポンサー: Sky株式会社
  • 契約形態: 所属契約
  • 契約内容: 鳥居は「Sky株式会社」所属選手として、同社のロゴ入りキャップとシャツを着用してトーナメントに出場する。Sky株式会社は、彼女の「ゴルフに対する真摯な姿勢に共感」し、その活動をバックアップするとしている。

このスポンサー契約において最も注目すべきは、その「タイミング」である。

Sky株式会社による所属契約のプレスリリースが発表されたのは、2024年12月25日 4(および2025年2月)。これは、彼女がプロテストに合格する約11ヶ月も前の出来事である。

当時、彼女の肩書は「滝川第二高等学校 3年」。つまり、Sky株式会社は、彼女がまだアマチュアの高校生であり、プロになれる保証すらなかった段階で、異例とも言えるフルサポートの所属契約を締結したのである。

これは、2024年の日本女子アマ制覇がいかにインパクトのあるものであったか、そして企業が彼女の将来性(マーケットバリューと才能)にいかに大きな投資価値を見出しているかを明確に示している。彼女は、プロテストの重圧に加え、既に大手企業の看板を背負うという二重のプレッシャーを乗り越えて、プロの世界への切符を掴み取ったことになる。

契約ゴルフウェアブランド

調査した資料において、特定のファッションブランドとの専属ウェア契約に関する情報は確認されていない。前述の通り、彼女のメインアパレルは、所属契約先であるSky株式会社のロゴが掲出されたシャツとなる。

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プレースタイルの分析と使用ギアに関する現状

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プロとして船出する鳥居さくらは、どのようなプレーヤーなのだろうか。

プレースタイルの総括

  • 自己PR: 「ドライバーの飛距離と、アイアンがセールスポイント」。
  • ドライバー: 平均飛距離260ヤードを誇るパワー。スランプを克服し、現在は自信を取り戻している。
  • アイアン: 「得意クラブ」。スランプ時代にラフや林から磨き上げた、多彩な球筋を操る技術が最大の武器 。
  • メンタリティ: 「イノシシ」と自称するアグレッシブな「攻め」の姿勢 。
  • 目標とする選手: 古江彩佳プロ、桑木志帆プロ 。

クラブセッティング

プロテスト合格者やトップ選手のギアは常に注目の的であるが、現時点(2025年11月)のJLPGA、GDO、ALBAなどの主要ゴルフメディアのプロフィールにおいて、鳥居さくらの使用クラブの具体的なメーカー名やモデル名(いわゆる「クラブセッティング」)に関する詳細な情報は公開されていない。

しかし、彼女にとっての「ギア」の物語は、ブランド名よりも重要な意味を持つ。それは、星野英正コーチとの関係性において、クラブが決定的な役割を果たしたという事実である。

彼女のキャリアを好転させたのは、特定のメーカーの新作クラブではなく、星野コーチが見抜いた「9.5度のドライバーロフト」という最適なスペックと、「歪みのないパター」という正確なアライメントであった。彼女のクラブセッティングは、スポンサーシップ以上に、コーチの分析と信頼に裏打ちされたものだと言えるだろう。

2026年シーズンへの展望

プロテストに合格し、JLPGAへの第一歩を踏み出した鳥居さくら。彼女は、プロテスト合格時のインタビューで、謙虚かつ明確な目標を口にしている。

「今後は、レギュラーツアーに沢山出て、シードを取りたいです」

「シード獲得」は、ルーキーにとって現実的かつ最大の目標である。しかし、鳥居さくらのプロフィールを分析すると、その言葉の響き以上に大きな可能性が秘められていることがわかる。

彼女は、典型的なルーキーではない。

日本女子アマを制した「エリートの経歴」。キャリアを脅かすほどの「深刻なスランプからの克服体験」。プロテスト本番での「76からの66」という劇的な「修復能力。

星野英正コーチという「最高の指導者との出会い」。そして、プロ入り前から獲得した「大手企業の強力なバックアップ」。

260ヤードの飛距離と、スランプが鍛え上げた「セールスポイント」のアイアン。2024年に「ダークホース」と呼ばれた少女は、もはやダークホースではない。

自らの実力で「プロ」の称号を掴み取り、万全のサポート体制を整えた。2026年、彼女がルーキーイヤーの謙虚な目標を遥かに超える活躍を見せたとしても、それは何ら驚くことではない。

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