2025年JLPGAプロテスト合格者

JLPGAの「最強ルーキー」ジ・ユアイ(Yuai Ji)徹底解剖

2025年11月、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の最終プロテストが、岡山県のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部で閉幕した。厳しい4日間の戦いを経て、21名の選手が2026年シーズンからのJLPGA正会員となる資格を手にした。その合格者リストの中で、ひときわ異彩を放つ存在がいる。2位で通過を果たした、ジ・ユアイ(Yuai Ji / 纪钰爱)だ。

2004年12月7日生まれの彼女は、プロテスト合格時点で20歳。中国の名門、深圳大学に在籍する現役の学生でもある。しかし、彼女のプロフィールを単に「中国出身の新人」としてカテゴライズすることは、その実力と潜在能力を著しく見誤ることに直結する。

彼女はJLPGAプロテストを受験した時点で、既に中国女子プロゴルフツアー(CLPGA)で通算4勝を挙げ、2024年シーズンのCLPGA賞金女王(マネーリーダー)に輝いている。それだけではない。2025年3月には、JLPGAステップアップツアーとCLPGAの共同認定試合で早々に優勝を遂げ、日本のプロツアーでも実力を証明済みだ。

最終プロテストを終えた彼女がJLPGAを通じて発した第一声は、「トップ通過できなかったことが少し残念ですが、プロテストに合格でき…」というものだった。合格の安堵よりも先に、首位を逃した悔しさが口をついて出る。この一言こそ、彼女がJLPGAツアーに持ち込む「基準」の高さを雄弁に物語っている。

ジ・ユアイ(Yuai Ji / 纪钰爱)プロフィール

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ジ・ユアイを理解する上でまず注目すべきは、彼女が現代のゴルフトレンドを体現する、恵まれたフィジカルと高度な専門教育を両立させている点である。

表1:ジ・ユアイ 基本プロフィール

項目 詳細
氏名 ジ・ユアイ(Yuai Ji / 纪钰爱)
生年月日 2004年12月7日
国籍・出身地 中国
身長 172cm
体重 65kg
血液型 A型
ゴルフ歴 6歳~
出身校 深圳大学(体育学院 運動訓練系 2023級)
プロ転向 2022年12月13日 (CLPGA)
1W平均飛距離 240ヤード
JLPGAプロテスト 1回 (2025年合格)
アマチュア時代の主な戦歴 2021 CLPGA Lanhai Ladies Golf Challenge 5位
今後の目標 シード取得すること

フィジカルとインテリジェンスの融合

172cm、65kgという体格は、現在のJLPGAツアーにおいても上位クラスのフィジカルであり、パワーヒッターとしてのアドバンテージを明確に示している。JLPGAへの登録情報によれば、彼女のドライバー平均飛距離は240ヤードに達する。

だが、彼女の強みは単なる体格やパワーに留まらない。彼女は中国のトップ大学である深圳大学の、それも「体育学院 運動訓練系 2023級」に在籍する現役の学生である。

これは、従来の国家主導型英才教育モデルから、米国のNCAA(全米大学体育協会)のように、大学がエリートアスリートの学業と競技を両立させながら育成する新世代の中国スポーツエリート像を体現している。

運動訓練系という専門課程での学習は、彼女が単なる感覚的なプレーヤーではなく、スポーツ科学、戦略的思考、プレッシャーマネジメントといった理論的支柱を併せ持つアスリートであることを示唆している。この「パワー」と「インテリジェンス」の融合こそが、彼女の冷静かつ安定したパフォーマンスの源泉となっている可能性は極めて高い。

「新人」ではない「プロ4年目」のキャリア

JLPGAの制度上、彼女は2026年シーズンを「ルーキー」として戦うことになる。しかし、彼女のCLPGA(中国女子プロゴルフ協会)のプロフィールによれば、プロ転向日は2022年12月13日である。

つまり、彼女がJLPGAの開幕戦でティアップする2026年シーズンは、彼女にとってプロキャリア「4年目」のシーズンに他ならない。JLPGAプロテストを受験した2025年11月の時点で、彼女はすでに丸2年にわたり、ツアーを転戦し、賞金を稼ぎ、プロとして生活を営むという実戦経験を積んできている。

これは、大学を卒業したばかり、あるいは高校を卒業したばかりでプロテストに合格した多くの日本の「同期」選手たちと比較して、計り知れないアドバンテージとなる。アマチュア時代の輝かしい戦績とは異なり、「プロとして勝つ」ことの難しさも、ツアーを戦い抜く厳しさも、彼女はすでに熟知している。

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CLPGA賞金女王、日韓ツアーへの進撃

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ジ・ユアイのJLPGAプロテスト合格は、彼女のキャリアの「始まり」ではなく、アジアのゴルフ界を舞台にした彼女の戦略的なキャリアプランにおける「次の一手」に過ぎない。

彼女が日本に来るまでに築き上げた実績は、彼女が「無名の新人」ではなく、アジアのトップエリートであることを明確に示している。

中国(CLPGA)での支配

2022年末のプロ転向後、彼女は即座にCLPGAで頭角を現した。その勢いは凄まじく、2025年のJLPGAプロテスト挑戦までに、CLPGAツアーで通算4勝を記録するに至る。

彼女の実力が頂点に達したのが2024年シーズンである。この年、彼女はCLPGAツアーの賞金女王(マネーリーダー)のタイトルを獲得した。一国のプロゴルフツアーで頂点に立ったという実績は、彼女の技術と精神力がすでに完成の域にあることを示している。

JLPGAステップアップツアーでの衝撃的な勝利

彼女の実力が本物であることは、2025年シーズン、早くも日本の舞台で証明されている。2025年3月20日から22日にかけて、中国の蘇州太湖国際ゴルフ倶楽部で「三菱電機オートメーション女子オープン」が開催された。

この大会の重要性は、CLPGAとJLPGAステップアップツアー(日本の下部ツアー)が共同で認定した国際試合であった点にある。

CLPGAのトップ選手として出場したジ・ユアイは、この大会で優勝を飾る。決勝ラウンドでは4バーディー、2ボギーの「70」をマークし、通算213ストローク(-3)でフィニッシュ。

特筆すべきは、難易度の高いコースセッティングの中、彼女が「総合成績でアンダーパーを記録した唯一の選手」となり、後続に3打差をつける圧巻の逆転勝利を収めたことである。

この勝利が持つ意味は大きい。彼女は、JLPGAプロテスト(11月)の約8ヶ月も前に、すでにJLPGAの「準会員」レベルの選手たちが集うステップアップツアーで「勝利」という最高の結果を出していた。この時点で、彼女の実力が日本の下部ツアーのレベルを凌駕していることは明白であった。

アジア3大ツアーを狙う「マルチツアー戦略」

ジ・ユアイの視線は、中国国内だけに留まらない。彼女のキャリアプランは、アジア全域をカバーする極めて戦略的なものである。

  1. KLPGA(韓国): 2024年のCLPGA賞金王という資格により、彼女は2025年シーズンのKLPGA(韓国女子プロゴルフツアー)1部リーグの会員資格を獲得した。
  2. LPGA(米国): 2025年シーズンには、米LPGAツアーが中国で開催する「ブルーベイLPGA」や「ビュイックLPGA上海」といったビッグトーナメントにも、CGA(中国ゴルフ協会)枠や推薦で出場。世界トップレベルの選手たちと競い合う経験も積んでいる。
  3. JLPGA(日本): そして今回、2025年11月にJLPGA最終プロテストに合格した。

これにより、彼女は2026年シーズンにおいて、アジアの3大メジャーマーケット(日・中・韓)全てのツアー資格を保持する、極めて稀有な「マルチツアー・プレーヤー」として参戦することになる。

これは、彼女が世界ランキング(Rolexランキング)のポイントを効率的に獲得し、最終的には米LPGAツアー、そしてメジャー制覇という頂点を見据えていることの表れである。

彼女のJLPGA参戦は、単なる「ツアー専属選手」の誕生ではなく、JLPGAツアーの国際化と競争レベルをさらに押し上げるグローバルなプレーヤーの登場を意味する。

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2025年 JLPGA最終プロテスト圧巻の「2位通過」

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2025年11月4日から7日にかけて行われたJLPGA最終プロテストは、彼女の実力とメンタリティを改めて証明する舞台となった。

4日間の戦績

合格ラインが「20位タイまで」という極度のプレッシャーがかかるサバイバルゲームにおいて、彼女のプレーは終始、他の受験生とは一線を画していた。

  • 初日(11月4日): 伊藤愛華と並び、首位タイ発進という完璧なスタートを切る。
  • 2日目(11月5日): 単独首位に立つ。
  • 3日目(11月6日): 単独首位をキープし、最終日をポールポジション(首位)で迎える。
  • 最終日(11月7日): 最終的に順位を一つ落としたものの、2位でフィニッシュ。

最終成績

  • 順位: 2位
  • スコア: -15
  • トータルストローク: 273

この-15(273)というスコアは、多くのレギュラーツアーで優勝争いに匹敵するレベルである。彼女が4日間を通じて「合格ライン」ではなく、「トップ通過(優勝)」だけを目指してプレーしていたことは明らかであり、技術レベルと精神的な成熟度が他の受験生と異なっていたことの証明である。

「残念」というコメントが示す基準値の高さ

彼女の並外れたエリート意識を象徴するのが、合格直後のコメントである。JLPGAが伝える「よろこびの声」として、彼女の第一声は「トップ通過できなかったことが少し残念ですが、プロテストに合格でき…」というものだった。

通常、多くの選手が涙と共に合格の喜びを語る中で発せられたこの「残念」という言葉は、CLPGA賞金女王であり、JLPGAステップアップツアー優勝者であるという彼女の強烈な自負の表れである。彼女にとって、このプロテストは「合格できるか」という試験ではなく、あくまで「1位で通過すべき」資格取得のプロセスでしかなかった。

このコメントは、彼女がJLPGAツアーに参戦するにあたり、極めて高い基準を自身に課していることを示している。JLPGAのプロフィールに記された「今後の目標:シード取得すること」という言葉は、彼女にとっては謙虚な表現に過ぎず、その視線は即時の「優勝」、そして「複数年シード」に向けられていると断言できる。

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クラブセッティング(WITB)

ユーザーの要求項目であるクラブセッティング(What’s in the Bag)に関して、現時点(2025年11月末)で、彼女の詳細な使用クラブ(ドライバー、アイアン、パター等のモデル名)を報じた信頼できるメディア(日・中・グローバル)は確認できない。

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スポンサー契約とゴルフウェア

クラブセッティングと同様に、彼女の「スポンサー契約」および「契約ゴルフウェアブランド」に関しても、現時点で公表されている情報は非常に限定的である。

スポンサー契約の現状

JLPGAおよびCLPGAの公式プロフィールには、彼女の個人のスポンサー(キャップやウェアの胸にロゴを掲出するメインスポンサーなど)に関する記載は確認できない。彼女が米LPGAツアーの大会に出場した際も、特定の企業スポンサー枠ではなく、CGA(中国ゴルフ協会)枠や推薦によるものであった。

コーチングスタッフ

彼女の強さを支える「コーチ」に関する具体的な情報も、現時点では公表されていない。

ジ・ユアイが2026年JLPGAツアーに投じる「衝撃」

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本レポートで分析した通り、ジ・ユアイを単に「2025年のプロテストに合格した期待の新人」として捉えることは、完全な誤りである。

彼女は「CLPGA賞金女王」、「JLPGAステップアップツアー優勝者」、そして「KLPGA会員資格保持者」という、アジア3大ツアーを股にかける「グローバル・プロフェッショナル」として、日本ツアーに参戦する。

JLPGAプロテストでの圧巻のパフォーマンス(-15、2位)と、合格後の「シード取得」 という控えめな目標は、彼女の実力からすれば単なる通過点に過ぎない。2026年シーズンにおける彼女の現実的な目標は、シード取得に留まらず、即時の「複数回優勝」、さらにはメルセデス・ランキング(年間女王)争いに加わることであると推察される。

彼女の参戦は、JLPGAツアーの国際化と競争レベルを否応なく一段引き上げるだろう。同時に、彼女の存在は、日本のスポンサーやゴルフメーカーにとって、巨大な中国市場とJLPGAを繋ぐ、最も重要なキープレーヤーとなる。

2026年のJLPGAツアーにおいて、ジ・ユアイ(Yuai Ji)という名前は、単なるルーキーとしてではなく、ツアーの勢力図を塗り替える即戦力の「主役」として、シーズンを通じてニュースの見出しを飾り続けることになるだろう。

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