2025年JLPGAプロテスト合格者

杉山もも !2025年豪州育ちの「知性」が切り開くプロテスト100位からの大逆転

2025年11月、岡山県のJFE瀬戸内海GC。4日間にわたる日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)最終プロテストの死闘を終えた一人の選手が、アテスト(スコア提出)を終え、自らの運命を知った。

通算1アンダー、15位タイ。合格ラインを突破したことを告げられた杉山ももの第一声は、歓喜の雄叫びではなかった。「正直、まだ頭真っ白です」。

頭が真っ白になった瞬間

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彼女が「真っ白」になったのには、明確な理由があった。彼女は、自らが予想していた合格ラインを「(通算)2アンダーくらい」だと信じ込んでいた。実際よりも1打厳しいそのラインをクリアするため、最終日は「6アンダーぐらい出さないといけないなあ」と、自らに極度のプレッシャーをかけてスタートしていた。

最終日、彼女は「68」で回り、スコアを4つ伸ばした。しかし、目標の「6アンダー」には届かない。彼女の心境は「最後、バーディパットが入らなくて、今はびっくりです」という言葉に集約される。彼女の脳内では、合格に必要なパットを外した(=2アンダーに届かなかった)という認識と、目の前にある「1アンダー、15位タイで合格」という現実が衝突していた。

この「勘違い」こそが、皮肉にも彼女の守備的な思考を消し去り、最終日のアグレッシブなプレーを引き出した。彼女の合格は、単なる喜びの表現を超えた、自己に課した高い目標と現実との予期せぬ乖離が生んだ、純粋な驚愕の瞬間であった。

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杉山 ももプロフィール

項目 詳細
氏名 杉山 もも (Momo Sugiyama)
インスタグラム 杉山 ももインスタグラム
生年月日/年齢 23歳 (2025年11月時点)
身長 / 体重 167cm / 56kg
血液型 A型
出身地 オーストラリア(ゴールドコースト)
国籍 オーストラリア、日本 (二重国籍)
最終学歴 パデュー大学 卒業(心理学専攻)
ゴルフ歴 13歳~
1W平均飛距離 245ヤード
プロテスト 2025年合格 (1回目)
アマチュア戦歴 2024年 カナダ女子アマ 3位
2025年 全米女子アマ マッチプレー進出
NCAA Big Ten セカンドチーム (2023)
目標とする選手 宮里藍、カリー・ウェブ、ネリー・コルダ
性格 (自己PR) 「笑顔を忘れずにがんばります!」
「家族からはよく笑っていると言われる」
「ゴルフ中は人が変わるともよく言われる」
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二つの祖国とアスリートの原点

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杉山もものキャリアは、JLPGAにおいて異色の光を放つ。彼女は静岡県出身の両親を持つが、自身はオーストラリア(豪州)で誕生した。現在は豪州のゴールドコーストにある実家を拠点とし、豪州との二重国籍を持つ。彼女のアイデンティティは、二つの「祖国」の文化に根差している。

彼女のアスリートとしての原点は、ゴルフではなかった。幼少期は、5歳頃から少しずつ触れていたゴルフよりも「水泳がメイン」だった。その実力は本物で、12歳の時には地元のゴールドコーストで平泳ぎ1位に輝くほどの運動少女だった。

しかし、彼女のキャリアにおける最初の、そして最も重要な戦略的決断が下される。13歳で、彼女は本格的にゴルフへシフトする。その理由は「オーストラリアでは体が小さかった」からだ。

これは、10代前半のアスリートとしては驚くほど成熟した自己分析と「戦略的ピボット」である。水泳、特に平泳ぎは、筋力とパワーが結果に直結する。彼女は、自らの「体の小ささ」が、将来的に水泳という競技で世界と戦う上での物理的な壁になることを12歳にして察知した。

そして、パワーの不利を「技術」「戦略」「精神力」で補うことができ、かつ選手生命が長いゴルフという競技に、自らのリソース(時間と情熱)を再配分するという、極めて論理的な決断を下した。

この冷静な「自己分析能力」と環境への「適応力」こそが、後にプロテストでの絶望的な状況を覆す、彼女の核となる資質であった。

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名門パデュー大学での学び

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彼女の異色な経歴は、その学歴においてさらに際立つ。高校卒業後、ハワイ大学に進学。その後、「成績が良かったのでトランスファーしました」と、米本土インディアナ州の名門、パデュー大学へ編入した。

パデュー大学は、ノーベル化学賞を受賞した故・根岸英一教授や、人類初の月面着陸に成功したニール・アームストロング氏をはじめ、多くの宇宙飛行士を輩出した世界的な名門校である。

杉山がこの理系の名門校で専攻したのは、スポーツ心理学、あるいは心理学だった。その動機は明確であり、「ゴルフに生かすため」以外にはない。

彼女は、この学びをプロテストというキャリア最大の試練で実践してみせた。

「目からの情報が多すぎると大変だから(ショットとショットの間に)歩いている時にいろいろな情報を見すぎず、シンプルに集中するようにしています」

この言葉は、彼女のプロテスト合格が、単なる幸運な逆転劇ではなく、理論に裏打ちされた「メンタルコントロール」の実践結果であったことを示している。

初日100位タイ、2日目96位タイという絶望的な状況に置かれた時、多くの選手は「順位表」という「目からの情報」を見て自滅する。しかし杉山は、自らの専門知識を行使し、意図的にその「情報」を遮断した。

「巻き返そう」と過去や未来に意識を飛ばすのではなく、学問として学んだ「今、ここ」への集中(=シンプルに集中する)を、キャリアで最も重要な瞬間に実行できた。彼女の強さの源泉は、技術や体力以上に、この「知性」にある。

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2024年JLPGA最終プロテスト「85人抜き」の軌跡

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杉山ももが合格したのは、2024年11月7日に岡山県のJFE瀬戸内海GCで行われた「2024年度 JLPGA 最終プロテスト」である。合格率2.9%という、まさに「狭き門」であった。

彼女の4日間の軌跡は、JLPGAプロテスト史上、最も劇的なカムバックの一つとして記憶されるだろう。

  • 初日(Day 1): 6オーバー、100位タイ。プロテストの夢が、わずか1日で潰えかねない絶望的なスタートだった。
  • 2日目(Day 2): さらにスコアを落とし、通算10オーバー、96位タイ。3日目のカットラインを目前に、ほぼ不合格が濃厚な位置まで沈んだ。
  • 3日目(Day 3): まさに絶体絶命の状況で、彼女の「知性」と「技術」が爆発する。この日、驚異的な「65」(7アンダー)をマーク。通算3オーバーまで一気にスコアを戻し、46位タイへジャンプアップ。奇跡的にカットラインをクリアした。
  • 最終日(Day 4): 前述の通り、「2アンダーが合格ライン」という自己暗示が、彼女を守りから攻めへと駆り立てた。プレッシャーのかかる最終日も「68」(4アンダー)とスコアを伸ばし、通算1アンダー、15位タイで、見事合格を果たした。

初日の100位タイから、最終的な15位タイへ。実に「85人抜き」の大逆転劇であった。

【表】杉山もも 2024年JLPGA最終プロテスト 4日間の軌跡

日程 スコア(Par 72) 通算スコア 順位(タイ) 概要
初日 78 (+6) +6 100位 絶望的なスタート
2日目 76 (+4) +10 96位 さらに後退、カット圏外へ
3日目 65 (-7) +3 46位 驚異的猛チャージでカットクリア
最終日 68 (-4) -1 15位 合格ライン突破
結果 85人抜きで合格

この結果を分析すると、彼女の「尻上がりに調子を上げた」という単純なものではないことが分かる。2日目終了時点で通算10オーバーだった選手が、最終成績を1アンダーで終えた。

これは、予選カットと合格ラインという二重のプレッシャーがかかった最後の36ホール(3日目、最終日)を、トータル11アンダー(65 + 68 = 133)という、ツアー優勝争いレベルのスコアで回ったことを意味する。

彼女は、プロテストという「試験」の場で、自らのリミッターが外れた「ゾーン」とも呼べる状態に入り、そのポテンシャルの高さを証明したのである。

カリー・ウェブと宮里藍の背中

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2025年、JLPGAツアーで彼女はどのようなプレーを見せるのか。ドライバーの飛距離は245ヤード。これは現在のツアーにおいては平均的な飛距離であり、彼女の武器がパワー一辺倒でないことを示している。

彼女のキャラクターは興味深い二面性を持つ。家族からは「よく笑ってる人。面白いことを探してる人」と評される一方で、「ゴルフをすると変わる」とも言われる。

彼女自身は「笑顔を忘れずにがんばります」と語るが、テスト中に笑顔が見られたのは「いいゴルフができたから」であった。彼女の笑顔は、リラックスの証ではなく、むしろ「好調なパフォーマンスの結果」として表れるもののようだ。

彼女が目指す未来は、その「ロールモデル」に明確に表れている。憧れのプロゴルファーは、ネリー・コルダ、宮里藍、そして同じ豪州出身のレジェンド(殿堂入り選手)であるカリー・ウェブだ。

この3人の選択はランダムではない。それは彼女の「アイデンティティ」と「野心」を完璧に反映している。

  1. カリー・ウェブ(豪州): 彼女が育った「オーストラリア」の史上最高の選手。
  2. 宮里藍(日本): 彼女の両親の国「日本」の史上最高の選手。
  3. ネリー・コルダ(米国): 彼女が学んだ「アメリカ」を主戦場とする、現在の世界最強の選手。

カリー・ウェブと宮里藍は、共にロレックス(女子世界)ランキング1位の経験者である。彼女は、自らの二重国籍の背景となる二つの国のレジェンドに敬意を払いつつ、その視線は明確に「現在の世界最強(コルダ)」と「最強の舞台(アメリカ)」に向けられている。

「アメリカは一番強い舞台なのでそこは行きたいな」。彼女の夢は、大学時代を過ごした地でのプレーだ。JLPGAの最終プロテストの合間に、米ツアーのQT2次にも挑戦していたという事実が、その野心の高さを裏付けている。

「まずは日本ツアーから」という言葉は、JLPGAがゴールではなく、世界への「第一歩」であることを示唆している。目指す選手像は「明るくて強い選手。ファンに好かれたい」 。

2025年シーズンへの体制とクラブ、スポンサー、ウェア、コーチ

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プロテスト合格を果たした杉山ももだが、2025年シーズンを戦うための体制は、現時点(2024年11月合格時点)ではまだ整っていない。プロテスト合格時のクラブセッティグ、およびスポンサー契約、契約ゴルフウェアブランド、コーチに関する公式情報は確認できない。

しかし、これはプロテストに合格したばかりの新人選手(ルーキー)にとって、極めて正常な状態である。むしろ、彼女は今、プロゴルファーとして最も市場価値が高騰する「オフシーズン」を迎えている。

彼女の価値は、単なる「プロテスト合格者」という枠に収まらない。スポンサー契約の観点から見れば、彼女は類稀な「パッケージ」を保有している。

  1. 劇的なストーリー: 「初日100位からの85人抜き」という大逆転劇は、メディアやファンの心を掴む強力なナラティブである。
  2. 知性という付加価値: 名門パデュー大学卒、スポーツ心理学専攻という経歴は、他のアスリートとの明確な差別化要因となる。
  3. 国際性(グローバル): 豪州育ちの二重国籍者であり、英語と日本語に堪能であることは、グローバルに展開する企業にとって非常に魅力的な広告塔となる。
  4. キャラクター: 「明るくて強い選手」を目指すという、ポジティブなイメージを持つ。

米国の大学ゴルフでキャリアを積んできた彼女は、特定の日本メーカーとの強い結びつきがまだない可能性が高い。これにより、全メーカーによる争奪戦が予想される。特に、彼女の「豪州」「米国」という背景は、グローバルに展開するアパレルブランドや外資系クラブメーカーにとって、日本市場と海外市場の「架け橋」として理想的な存在である。

また、アメリカの大学(NCAA)の組織的なコーチングから離れ、JLPGAという個人戦の舞台で戦うためには、彼女の「知性」を理解し、そのメンタル理論を日本のコースに適応させていく「参謀」(コーチ)との出会いが不可欠となる。

これらの契約は、2025年シーズンの開幕(例年3月)に向けて、12月から2月にかけて順次発表されるのが通例である。彼女がどの「顔」(ウェア、スポンサー)を選び、どの「武器」(クラブ)を手にし、どの「参謀」(コーチ)と組むのか、その動向は今オフシーズン最大の注目トピックの一つとなるだろう。

JLPGAに登場した「明るくて強い」知性派

杉山ももは、2025年のJLPGAツアーに登場する、極めて異質なルーキーである。彼女の武器は、245ヤードのドライバーだけではない。

彼女の真の武器は三つある。

第一に、13歳で水泳からゴルフへ、ハワイ大学からパデュー大学へと、常に最適解を求めて環境を変えてきた「適応力」。

第二に、名門大学で「ゴルフのため」に学んだスポーツ心理学という明確な「理論(知性)」。

そして第三に、初日100位の絶望から「情報を遮断し、シンプルに集中する」ことで「85人抜き」 2 を実現した、理論に裏打ちされた「精神力(実行力)」である。

彼女が目指す「明るくて強い選手」という姿は、彼女が学んだ「心理学」と、「笑顔を忘れずに」という彼女本来の「人柄」が融合した先にある。

JLPGAは、ただ一人の有望な新人選手を迎えたのではない。豪州と日本、アスリートと学術という「二重の背景」を持つ、知性派のニューヒロインを迎えたのである。彼女が2025年シーズン、その類稀な「頭脳」でどのようなゴルフを構築し、我々を驚かせてくれるのか、期待は高まるばかりである。

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